親愛なる娘へ

この年になって、今日は仕事でこっぴどく叱られたよ。もうずっと、自分がなんのために頑張ればいいのか、分からないでいるんだ。

未来はいつだって思いがけない。想像をはるかに超える出来事がさも当たり前のことのように次から次へ起きる。

過去はいつだって色褪せない。美しかった思い出はまるで呪いのように脳裏にこびりついて洗い流すことなんてできず。


真衣子、あれから四つの季節が三回通り過ぎて、君は二十歳になるね。





あんな痛ましい事故がなければ。



一日だって、いや、一時間だって真衣子のことを思い出さなかった日はない。

あの日に戻れるなら、私は無理を言って仕事を切り上げて君の誕生日を祝うだろう。どんなわがままだって聞こう。


何が欲しい?
食べたいものはあるかい?
どこへ行きたい?


真衣子がいなくなってしまって、ほどなく妻との関係も冷え切って、三人で住んだあの家も売ってしまって、今は一人暗い部屋でこんな手紙じみたものを書いている。

後悔をしているわけじゃない。あの時の精一杯を、ただ、精一杯に生きていたんだ。結果がすべてだというのなら、私は私のすべてを否定しなければならない。

それなのに、もう分かるはずもないことで今も悩んでしまうんだ。



真衣子。

父さんの子に生まれて、君は幸せだっただろうか。

父さんは、真衣子がいて、それだけで幸せだった。


もう届かない言葉を、それでも君のために書き残す。


親愛なる娘へ。


最愛の真衣子へ。