正しいと間違いと

「君は正しいのかい」
「私は正しいわ」
「どうして自分は正しいと言い切れる」
「それは私が私は正しいと信じているからよ」
「信じる、か。失礼だけど、僕は正しい人が嫌いなんだ」
「知っている」
「僕は僕が正しいとは到底信じられないし、誰よりも間違っていると思う」
「あなただって正しいじゃない」
「どうして」
「自分が間違っているということを信じて、それが正しいと思っているから」
「参ったな。正しいというのは一体なんなのだろう」
「少なくとも、絶対的な価値とは思えないわ」
「普遍的な正しさは無いと」
「そう。多勢の正しさに合わせて正しくあろうとすることは間違いだと思う」
「多勢の正しさに合わせることが正しいと信じているんだろう」
「そうね。それも間違いとは言えないかもしれない」
「結局、間違っていることなんかないんじゃないか」
「いいえ、一つだけあるわ。他人の正しさを否定することよ」
「正しさは自らのためだけに、ね」
「ほら、やっぱり私は正しいわ」
「僕は間違いだらけだ」