砂のお城

砂のお城に住みたかった
誰かが建てて忘れ去られてしまった
潮風に吹かれてさらさらさら
ヤドカリが遊びに来ると
やあ、素敵な家だね
散りばめられた貝殻に
目を細めて頷いた

砂のお城に住みたかった
誰も振り向かないような
子供が作った小さな夢の跡
乾いたヒトデが恨めしそうに
暖かい陽の光を浴びて
夏が終わっちゃったね
潮の匂いにさようならと
呟いて眠った

砂のお城に住みたかった
夕暮れ時に満ちた海が
無邪気に波を押し寄せて
あっけなく連れ去られて
何もなかったみたいに
素敵な家は流されて

夏が終わっちゃったね