無差別殺人
無差別殺人で、罪もない人が、不条理にも殺される。と言うが、果たしてそうだろうか。殺されるべき理由を一つも持ち合わせていない人間が果たしているだろうか。むしろ、何ら罪の意識も持たずのうのうと生きている人間こそ殺されて然るべきではないか。不注意で肩をぶつけておきながら舌打ちをする小太りの男。乗車列を何の気なしに無視する初老の女。虫を火炙りにして嬉々とする子供達。なるべく多く殺したい。それもなるべく苦しむ表情を見ながら。痛ませながら。苦しませながら。生きることそれ自体が罪だ。生きるということは奪うことだ。奪うことでしか在れない僕たちの存在は罪だ。振り回したナイフでその罪を自覚させたい。死ぬことでしか報えないのだということを知らしめたい。あなたが生きている場所はみな誰かから奪い取ったものだ。あなたが存在する空間はみな誰かを退けて手に入れたものだ。しかめっ面のあなたが昨日死んでいれば、今日の満員電車はもう少し空いていただろうね。望まれているなんて自惚れるなよ。あなたがいなくてもどうにでもなるし、自分がかけがえのない存在だなんて思っているならその喉元ナイフで切り裂いてあげよう。死後の世界とやらから見てるといい。海に垂らした黒インクみたいにあっという間にあなたの存在も霧散する。ほら、謝れよ。生きていてごめんなさいって。ごめんなさいって言え。いっそ殺してくれ。