読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

観音小説

額に暖かな手の温もりを感じて目を開くと、愛しい彼の顔がすぐそこにあった。

「かんのん…」
「目を覚ましましたね」

聖観音の姿をした彼は優しく微笑むと、私の髪をそっと梳く。休む間もなかった仕事で溜まった私の疲れはいとも簡単に掬い上げられ、光となって夜闇に溶けていく。

「即身セックスしましょう」

脱ぎ捨てた袈裟がひらひらと舞い音も立てず床に広がる。その雅に頬を赤らめていると、彼は部屋の明かりを落とした。暗闇の中で煌めく背光は、宛ら皆既日食ダイヤモンドリングだ。

「ぁんっ」

おもむろに下着を下ろされ、観音開きされる。曼荼羅をなぞる彼の指。俄かに湿りゆく魂の入り口に彼は顔を埋めた。

「だめっ!シャワーあびてないから…」
「おん あろりきゃ そわか」

真言を唱えると一層激しく彼の舌先が暴れ出し、私の密教を暴いていった。

「ひとりで、シたんですね」

彼の低く落ち着いた声に頷くと、私の手を取って曼荼羅へと導く。

「見せてごらんなさい」

彼のか私のか分からない聖水に濡れた極楽に咲く梵鐘を摘んで見せると、彼は満足そうに目を細めた。観音様に見られているというだけで、身体が熱く疼くのを感じる。

「かんのんっ」

照れ隠しで彼の腰に腕を回しその御胸に顔を寄せた。お焼香の香りが鼻腔を通って頭の中に染み渡っていく。一瞬、先にこの世を去った昔の男が脳裏によぎった。

「彼もまた、菩薩となりあなたを見守っていることでしょう」

彼の優しさに愛しさが募り、撥を咥えた。この撥が、お鈴を打ち鳴らしあの諸行無常を響かせるのだと思うと舌先にも心がこもる。

「ねえ、いれて?」

我慢できなくなった私がそう言うと、彼は私の背中に腕を回し寝かせ再び観音開いた。薩摩藷が如く膨れ上がった観音の菩薩が私の空白を埋めていく。

「んんっ」

彼に打ち鳴らされた私は諸行無常を喘ぎ、瞬く間に三途の川を越えようとする。

「イっても構いませんよ」
「んっんっだめっ!あっ!んぁ、ぁあっ!」



















浄土






そう、浄土。

私は生きながらにして浄土へ。

ああ、観音様。

聖観音様。

あなたの慈悲に心からの感謝を。