観音小説〜サハスラブジャ・アーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラ
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観音小説 - まつをのオナホマ日記
朝、何かが頰に触れた気がして目を覚ます。穏やかな日曜の午前、日が差す方向に目を細める。そこには愛しい彼の姿があった。
「かんのん…」
「朝です」
寝ぼけた頭が冴えて眼前の光景を明確に意識できるようになって初めて気付く。
千手観音だ。
柔軟剤の香りが効いた柔らかなパジャマの上から彼の手が目覚めたばかりの敏感な身体をなぞり始める。次第に二本、三本と触れる手が増えていき、思わず甘い声が漏れる。
「ぁっ…ぃゃ…」
「嫌だなんて、嘘をついたらバチが当たりますよ」
そう言いながら既に硬くなり始めている彼のバチを見つめて頰を赤く染めながらも、そのバチが当たるのを想像して期待してしまう私がいる。
彼の手は器用に私のパジャマを脱がし数珠の真珠をなぞるような優しさを以って素肌に触れる。肌と肌が触れる境界は朝日に曖昧になり、彼と私が一つに繋がっているような気がした。
「おん ばざら たらま きりく そわか」
真言を唱えると、彼は左手の羂索で私の両手を縛りながら一層多くの手で私の身体をまさぐる。千本の手の一つ一つに付いた眼に細胞の隅まで見られて私の曼荼羅がダラダラと恥ずかしい液体を垂らす。あまりの手の多さに暇を持て余した手が宝鐸をぽーんと打ち鳴らしている。
縛られ抵抗することもできずに下を脱がされて、いよいよ身体中に彼の手が触れる。皮膚に散りばめられた全ての触覚を刺激するかのように彼の1000×5=5000の指が触れ、一気に絶頂へと高揚していった。
「んぁっだめっあっ…んんん!」
弓なりにしならせた身体が奏でる琴の音は穏やかな朝に不釣り合いなほど荒々しく、私はこと切れたように力が抜けてベッドに沈み込んだ。
「ヒクヒクしてますね」
二本の手で私を観音開きながらもう一本の手に付いた眼で私の曼荼羅を見つめながらもう一本の手で私の頰に優しく触れる彼のもう一本の手が私の髪を梳く。
慈悲を注ぎ込まんとするそそり立った胡瓶をあてがわれ、今しがた登りきった山よりもずっと高い山の頂が目に浮かぶ。
「入れて…」
メデューサの髪のようにくねくねと千本の手を宙に舞いさせながら、それでも彼のバチは私の曼荼羅の中心ただ一点目掛けて振り落とされる。
「んんんぁあっ!」
彼の手に見つめられて石のようになった私の身体はただただ彼の慈悲を受け止める。バネに弾かれたように一気に飛び上がり雲を突き抜け見えた山頂。刹那。朝日。紅蓮華。
「んっんっんっだめっああっ…!」
喜怒哀楽の全てを超越した快楽に。
そう、涅槃。
ああ、観音様。
千手観音様。
あなたの深海よりも深い慈悲に心からの感謝を。