携帯小説〜深沢仁さんと巡り会ひ〜
こんばんは、マツオです。今日は中高生時代の思ひ出、私の人格形成に甚大なる影響を与えた携帯小説と向き合ってみたいと思います。
携帯小説
携帯小説と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるのでしょうか。『恋空』あたりがやはり有名どころでしょうか。
多くの人がそうしていたように、私も中高生の頃はたくさんの携帯小説を読み漁りました。夢小説なんかも読んでました。夢小説って、今思うと革新的ですよね。自分の名前が主人公の名前になるというのは、こう、読み手の自由度を数段も上げましたね。
携帯小説があそこまで流行ったのはガラケー時代だったからなのかな、と思います。今も盛んな文化だったら申し訳ないのですが、ガラケーの小さな画面でページをスクロールしていく行為こそが携帯小説の醍醐味だったように思います。スマホではあまりに画面が広くスクロールも容易で、あの臨場感は味わえないように思うのです。
Empty Insideと深沢仁さん
皆さんもご存知、携帯小説にはある種の定型化されたパターンがありました。基本的にはどれも恋愛についてのお話で、その多くが悲恋でした。やっとの事で思いを伝え合い結ばれた恋人達が、無情な悲劇でパートナーを失うというのが恒例となっていました。だいたいヒロインかヒロインの想い人が病気で亡くなったりします。
興隆し、数多あった携帯小説サイト。その中でも一際異彩を放ち、それでいてランキングサイトでは最上位にあったEmpty Insideというサイトをご存知でしょうか。私は当時の気分や性格も相まって、そのサイトで人生が変わるほどの作品達に出会いました。
先に述べた定型化した小説とは一線を画した物語が、Empty Insideには並べられていました。
外に出ると病気になるからと言って妹を豪邸の中だけで一人育てている青年
一週間の内の6日間を、3人のセフレ(正確には「交尾友達」だったような)と順に過ごす女性
母親に「あんたさえいなければ」と言われながら生きる女子高生
とにかく、私の中での携帯小説の見方はEmpty Insideと出会ってガラリと変わったのです。もしかしたら、もっと違う雰囲気のものや、もっと奇抜なものを並べている携帯小説サイトもあったかもしれません。が、Empty Insideの凄いところは、王道から外れながらも相当数の人々に支持されていたことでしょう。
そこで紡がれる物語は、どれも心の中に陰りのある人々によって膨らみ、どこか冷めた温度で淡々と進んでいくのでした。それなのに、読了後にはぽっかり空いていた心の穴に、小さな暖かい灯りが残るのでした。
当時といわゆるペンネームは変わっていますが、Empty Insideを運営されていた方は深沢仁さんと言います。今はEmpty Insideを離れて、小説家として活動しています。今でも深沢仁さんの書く物語は私にとって特別なのです。
二作目までシリーズものとして出版されているこちら。相も変わらず深沢仁らしい文章と登場人物と物語。深沢仁さんの書く人物はみんな、本当に素敵で憧れます。
- 作者: 深沢仁
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2016/03/04
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る